🧾 1. 労働保険の基本構造

労働保険とは、以下の 2つの制度の総称 です:

制度名 管轄省庁 主な対象 用途
労災保険(労働者災害補償保険) 厚生労働省 全ての労働者 業務中・通勤中の災害に対して補償
雇用保険 厚生労働省 雇用契約のある者 失業時の生活保障、教育訓練給付、助成金等

📌 この2つをまとめて「労働保険」と呼び、まとめて申告・納付を行う制度です。


🏢 2. 誰が加入義務を持つのか?

ケース 労災保険 雇用保険
正社員を雇用した 加入義務あり 加入義務あり
パート・アルバイトを雇用した 加入義務あり 週20時間以上&31日以上の見込みがあれば加入義務あり
一人社長(法人) 原則加入不可 原則加入不可(任意特別加入あり)
個人事業主 原則加入不可 原則加入不可(労災は特別加入可)

労災保険はすべての労働者に対して事業主が強制加入。雇用保険は一定条件の労働者が対象。


🧮 3. 保険料の仕組みと負担割合

保険種類 保険料率(例) 事業主負担 労働者負担
労災保険 業種により0.25〜8.8% 100% 0%
雇用保険 一般の事業で13.5/1000〜 約8.5/1000 約5/1000

※年度ごとに変動あり(2025年度:一般の事業で13.5‰)

🔍 労災保険は事業主が全額負担。雇用保険は労使で分担します。


📑 4. 労働保険に関わる事業主の義務

✅ 事業主が行うべき手続き

項目 内容
労働保険の「保険関係成立届」提出 労働者を1人でも雇ったら10日以内に提出(労基署)
保険料の概算申告・納付 毎年6月頃に提出。分割納付可
雇用保険の適用事業所設置届 ハローワークに提出
雇用保険の資格取得届/喪失届 労働者の入退社時に提出

📌 5. よくある誤解・注意点

誤解 実際は…
フリーランスや業務委託は労災が出ない 実態が「労働者性」ありと判断されれば適用されることがある
一人社長には労災は使えない 「特別加入制度」がある(中小事業主、建設業など)
雇用保険は社員だけが対象 週20時間・31日以上でパートも対象になる

📘 6. 特別加入制度(労災保険)

自営業者・一人親方・中小企業経営者などは、通常は労災保険の対象外ですが、**「特別加入」**という制度を使えば労災保障を受けられます。

✅ 対象者と例

区分 加入できる人
一人親方等 建設業・大工・左官・とび職など
中小事業主 法人の代表、個人事業主で労働者を雇う人
海外派遣者 現地の医療が乏しい国への派遣者

✅ 特別加入には労働保険事務組合を経由する必要があります。


💰 7. 助成金とつながる雇用保険の利点

雇用保険に加入していると、以下のような助成金制度の活用が可能になります:

  • キャリアアップ助成金(正社員転換など)
  • トライアル雇用助成金(若年層等を試用雇用)
  • 両立支援等助成金(育児・介護と仕事の両立支援)

💡 雇用保険に加入していないと、これらの助成金は一切申請できません。


🔄 8. 年1回の手続き:年度更新(毎年6月)

内容 概要
労働保険料の精算申告 前年度の確定保険料+今年度の概算保険料を申告
対象期間 毎年4月1日〜翌年3月31日
提出先 管轄の労働基準監督署(e-Govからの電子申請も可能)

🧭 9. 実務で役立つツール・リンク

名称 内容 リンク
e-Gov電子申請 労働保険関連の手続きがオンラインで可能 https://www.e-gov.go.jp/
厚生労働省 労災保険特別加入ガイド 特別加入者向けの詳細制度説明 https://www.mhlw.go.jp/
日本労働保険事務組合連合会 特別加入・手続き相談窓口 https://www.roumu-jimu.or.jp/

✅ まとめ:労働保険の本質とは?

  • 「労働者を守る」と同時に「事業主のリスクも守る」制度
  • 正しい理解と加入で、事故・退職・訴訟リスクを大きく減らせる
  • 法的義務であると同時に、信用力(融資・助成金)にもつながる