会社設立や役員変更などの登記をオンラインで進めようとすると、最後に立ちはだかるのが「電子署名の環境づくり」です。
その“詰まりポイント”に対して、法務省とデジタル庁が、2026年7月から商業登記電子証明書の「GビズID連携のリモート署名方式」を導入予定と発表しています。
この記事では
・何が変わるのか
・何がラクになるのか
・会社設立の実務でどう効くのか
・今のうちに準備しておくこと
を、起業者向けにわかりやすくまとめます。
- そもそも「商業登記電子証明書」とは何に使う?
商業登記電子証明書は、登記・供託オンライン申請などで、申請データや添付書類に電子署名を付けるための法人代表者向けの証明書です(法務省の電子認証制度)。
オンラインで請求し、申請書総合ソフト等で申請情報の作成や電子署名を付与して送る流れになっています。
- 現状の「しんどい点」:ローカル環境とファイル管理が手間
現行方式(ローカル署名方式)では、ざっくり言うと次のような負担が出ます。
・専用ソフトの導入が必要(申請用総合ソフトや商業登記電子認証ソフト等)
・Windows前提の設定が発生しやすい(推奨環境、.NET Frameworkなど)
・署名鍵や証明書をファイルで管理するので、PC移行や紛失・管理のストレスがある(この課題が導入背景として説明されています)
つまり「登記をオンラインでやりたいのに、最後にPC環境で止まる」という状態になりがちです。
- 2026年7月から何が変わる?(結論)
2026年7月から、商業登記電子証明書は
GビズIDと連携したリモート署名方式に移行する予定です。
公表されている主な変更点は次のとおりです。
(1)スマホ(GビズIDアプリ)で電子署名ができるようになる
スマートフォンのGビズIDアプリを用いて、オンラインで電子署名を付与できるようにする、と説明されています。
(2)発行準備・管理がブラウザベースになる
証明書の発行準備や管理が、ブラウザでできるウェブサイト上で可能になる、とされています。
(3)署名鍵と証明書が「ファイル保管」から「クラウド保管」へ
署名鍵と商業登記電子証明書が、ファイル形式で保管する形から、クラウド上で安全に保管される形に変わる、と説明されています。
- 何がラクになる?会社設立実務でのメリット
メリットは、体感として大きく3つです。
メリット1 PC乗り換え・紛失リスクのストレスが減る
「鍵ファイルをどこに置いたか」「PC移行のたびに設定が必要」みたいな事故が減りやすくなります(ファイル保管からクラウド保管へ移るため)。
メリット2 電子署名の導線が“スマホ中心”になり、社長の実務と相性が良い
代表者が、スマホで本人確認と署名を完Confirmして進める流れに寄っていくので、
「出先で止まる」「代表だけ印鑑(署名)が必要で詰まる」が減りやすい設計です。
メリット3 オンライン登記が「司法書士に丸投げ」以外でも現実的になる
今は、申請用総合ソフトの準備(推奨環境、.NET等)が壁になりやすいので、ここが軽くなるだけでも“自分でオンライン申請する”選択肢が広がります。
注意点(過度な期待は禁物)
今回の発表は「電子署名と証明書管理」の大きな改善です。いっぽう、登記・供託オンライン申請の作業全体で見ると、申請用総合ソフトの推奨環境など、PC側の要件が残る領域もあります。
つまり「全部スマホだけで完結」まで断定はできないので、ここは続報を待つのが安全です。
- 2026年7月までにやっておくと良い準備
実務として、先に整えておくとスムーズです。
(1)GビズIDの整備
リモート署名はGビズID連携が前提なので、まだの場合は早めに取得・運用に慣れておくと安心です。
(2)代表者スマホにGビズIDアプリを入れ、使える状態にしておく
GビズIDアプリはオンライン申請や二要素認証で使う位置づけで、端末に表示されたQRコードを読み取って手続きする流れが説明されています。
(3)スマホOS要件の確認
GビズIDアプリはサポートOSが案内されています(例:iPhoneはiOS 17以上、Androidは一定バージョン以上など)。古い端末だと将来使えなくなる注意喚起もあります。
(4)社内の運用ルールを決める(ここが意外と重要)
・代表者のスマホを誰が管理するか(紛失時の対応)
・二要素認証を誰がどのタイミングで承認するか
・登記の申請作業を社内でやるのか、専門家に委託するのか
このあたりを決めておくと、導入後にスムーズです。
- よくある質問
Q1. 2026年7月になったら、今の商業登記電子証明書は使えなくなる?
現時点では「運用開始を目指す」「導入予定」として変更点が説明されている段階です。切替手順や移行の詳細は今後の案内を確認するのが確実です。
Q2. Macしかないけど、登記オンライン申請できるようになる?
今回の発表は「署名・証明書管理」の改善が中心です。申請用総合ソフトの推奨環境など、PC側の要件は別枠で案内されています。
Macのみで完全にいけるかは、導入後の公式手順を見て判断するのが安全です。
まとめ
2026年7月から予定されている「GビズID連携のリモート署名」は、会社設立や登記変更のオンライン手続きで、最大のボトルネックだった“電子署名の環境づくり”を大きく軽くする可能性があります。
起業者としては、2026年7月を待つだけでなく
・GビズIDを先に整える
・代表者スマホの体制を作る
・オンライン登記の社内運用を決める
ここまで先にやっておくと、切替後の実務が一気にラクになります。